俺たちのヒーロー列伝・その13 三田村邦彦(1953~)
俺たちのヒーロー列伝・その12 山下真司(1951~)
続いてのヒーローは…
三田村邦彦(みたむら・くにひこ)さんです。
この人に見るヒーロー性は、まずは「必殺仕事人」シリーズで好評を博した「錺り職の秀」役が挙がると思います。他にも正義キャラを結構演じていて、最近はあまり役者としてというより、「阿波踊りの人」とか旅番組に出てくる人のイメージが強いかもしれませんが、個人的に見出したヒーロー性につき綴っていきます。
まず三田村氏のデビュー作は1979(昭和54)年映画「限りなく透明に近いブルー」という村上龍氏のやはりデビュー作で、いきなり主演デビューしています。1回見ただけですが、なんとも虚無的な雰囲気が全体を支配している、そんな感じでした。基地の街でクスリや乱交パーティーなんかが横行するものでしたが、これを見て「ニューヒーローが現れた」と思う人は、そうそういなかったのでは?と勝手に思います。
また、同年に「必殺仕事人」で先述の錺り職の秀として登場し、これが実質的な世間への登場となります。当時25歳、やや遅いスタートですが、この秀役こそが必殺シリーズにもたらした「新たなヒーローの誕生」となりました。
「必殺」シリーズは、1972(昭和47)年から続いていて当時で7年を迎えたロングランシリーズで、「必殺仕掛人」をはじめ「必殺○○人」のように手を変え品を変え、それまで14作を世に送り出していました。
しかし当時は低視聴率にあえぐようになり、1978(昭和53)年より放送されていた「翔べ必殺!うらごろし」は超常現象などのオカルトを主題にし、それまで必殺シリーズの重要な世界観であった「金をもらって殺しをする」という図式をも取り払う異色中の異色作で、視聴者離れが加速したか視聴率3%台を記録したともされ、必殺シリーズの終了まで危惧され、スタッフも次番組となったこの15作目「必殺仕事人」がシリーズ最終作になる事も視野に制作されたといいます。
ここで番組フォーマットを原点回帰させ、仕掛人のように重厚な元締めを置きつつ、仕置人から隔作?ごとにレギュラーとして人気を得た藤田まこと氏演じる中村主水を主役に据え、そして同じく仕置人で沖雅也氏が演じた「若手のイキのいいキャラ」として三田村氏が据えられ、彼が仕事人の仲間になるところから物語がスタートしました。走りまくって、また怒りの表情も凄まじく、とにかく彼の活躍は血沸き肉躍る感がありました。
当初は一匹狼でその場しのぎの若造仕事人だった秀の成長ストーリーが番組で描かれ、ドラマの視聴率は回復しシリーズ打切りどころか、延長に次ぐ延長で、シリーズではぶっちぎり最長の84回の放送(大抵の作品は13または26回前後で終了)を重ねる大ヒット作となり、番組もですが三田村氏の人気も急上昇し、1作を挟んで彼はまた「新・必殺仕事人」でも再登場、ここでも1年余りの放送回を重ね「必殺ブーム」の立役者としてその地位を確立していきました。
三田村氏はこの「新・必殺仕事人」で壮絶な殉職を遂げる案もあったそうですが結局流れ、その後も「必殺仕事人Ⅲ・Ⅳ」と1984(昭和59)年まで1作ずつ間に挟みながら5年間も出演を続け、当初の粗削りな若者からすっかりスマートな中堅どころという立ち位置へシフトし、最後は30歳になっていました。
秀役はここで卒業、かと思いきや以後も度々出演する事となり、2年後1986(昭和61)年の映画「必殺!Ⅲ裏か表か」で単発で復帰したと思ったら、中村主水から独立する形で「必殺まっしぐら!」でやはり秀としてレギュラー主演を果たし、2年前に勇次役中条きよし氏がやはり独立して「必殺仕切人」に出演しており、ここでは京マチ子という主演者がいる中での「実質的主人公」という立ち位置でしたが、三田村氏はクレジット上も純然たる主役として出演していました。
今後こそ卒業かと思ったら1991(平成3)年の必殺スペシャルでゲスト出演の後、同年久々の必殺シリーズでレギュラー枠となった「必殺仕事人・激突」に再び中村主水と共にやはり秀として出演しました。当時38歳、髪も短くなり爽やかさは健在でしたが、アクションシーンで走るところもすっかり遅くなっていて、正直衰える秀の姿を見たくなかったのはありますが、年代によってはあの秀にヒーロー性を見たという方もいたのでしょうか。
秀の役は相当に当たり役だったのもあってか、1996(平成8)年の映画「必殺!主水死す」で、遂に主水の死を看取るまで出続ける事となりました。当時42歳、勇次役の中条氏は50歳になっていました。25歳のイキのいい秀が42歳まで同じ役を演じていたのはビックリでした。
当初の5年間はこのように必殺に出続けながら他の作品にも出て人気を博していく事となった三田村氏でした。1981(昭和56)年に「警視庁殺人課」では「秀才」とあだ名される虎間一平刑事役で、派手なシャツにジャケットとスラックス、とにかく揃いでない配色の服が妙に印象的でした。
この作品は警部役の主人公・菅原文太ワールドという感じで、これを見守る上司役として重鎮/鶴田浩二氏が鎮座する、それは重いドラマで、三田村氏はその他若手刑事の中で割とセリフの多い、比較的目立つ位置でした。「大捜査線」という刑事ドラマが杉良太郎ワールドでその中での神田正輝氏の立ち位置とかなり似ています。とにかく、そんなすごい見せ場はなく全部文太氏がもっていく感じでした。
しかしこのドラマの最終回は荒唐無稽この上なく、そのタイトルも「警視庁殺人課・全員殉職PART2」でした。本当に課内の刑事が一人ずつ、全員殉職してしまうのです!
全員殉職の流れとしては、最初は風車の弥七でお馴染みの中谷一郎氏が演じる通称ビショップが人質を乗せた幼稚園バスを制止にかかるも、バスは無情にも彼を跳ね飛ばし、収容先病院で息を引き取り、オートバイから走るバスに乗り移ったチャンス(関根大学氏)は転落寸前のバスを崖っ淵で停車させるも、背後から犯人たちにメッタ撃ちの銃弾を撃ち込まれ、バス停車直後に絶命、そしてエンジェル(一色彩子氏)は三田村氏演じる秀才と共にバスに飛び移り、走るバスの中で人質救出作業をするも隙を突かれ、やはり犯人たちの銃撃に遭い絶命…と次々に死んでいきます。
そして秀才も、エンジェルが撃たれた直後にやはり背後から犯人たちの銃弾を浴び致命傷を負います。しかし人質の最後の一人を救って、走るバスから飛び降ります。ミスター(菅原文太氏)が道連れに爆発に巻き込む形で飛び降りた犯人(石橋蓮司氏)がヨロヨロとしながら狙ってくるのを目にした秀才は瀕死の身体を揺り起こし、最後の力を振り絞って、ジャンプしてクルッと前転しながら発砲すると犯人に命中し、これを見届けるように秀才もその場で絶命しました。という事で刑事ドラマで殉職シーンを演じています。
その後は秀才の亡骸から手にしていた銃を取ったミスターが走るバスと一騎打ち。既に深手を負っていたミスターは女犯人から銃弾を撃ち込まれながら、相討ちの形でバスへ発砲し、見事討ち果たしました。死にゆくミスターのもとへ部長(鶴田氏)が歩み寄り、ミスターは「少し、、休ませてください…」と呟き、ハッキリと絶命したシーンは描かれずに終わりますが、テロップで「警視庁殺人課全員殉職す」と出ていたので殉職したのでしょう。そんなドラマでした。
この翌年1982(昭和57)年に人気刑事ドラマ「太陽にほえろ!」に出演する事となります。
それまで出演していた沖雅也氏の演じる「スコッチ」の病死後の後任として七曲署へ配属となったジプシーこと原昌之刑事として登場します。
ジプシーと命名されたニックネームの由来は、どこの署にも長くいる事がなく、あちこち渡り歩く事から「ジプシー刑事(デカ)になっちゃうぞ」と言われた事から来ています。前任スコッチのキャラクターを違う形で踏襲したクールタイプの刑事役でした。沖氏の後任もあり、全くの新人ではなくある程度キャリアのある若手の設定で、共演した神田正輝氏、渡辺徹氏と共にアイドル的な人気を得る事となります。
当時の三田村氏がやはり必殺仕事人との掛け持ち状態であり、あまり主演作がなく、クールで無鉄砲なキャラクターも段々軟化していき、あまり強烈なインパクトを残せないまま、わずか1年で転勤の形で番組を降板する事となったのは残念でした。殉職がウリともいえるこの番組で珍しく転勤の形で去る事となりましたが、先述の警視庁殺人課で殉職は経験済だった訳です。
当時必殺との掛け持ちだけでなくNHK時代劇「壬生の恋唄」というドラマで主演に抜擢され、さすがに継続出演は困難となったようで、当初は長期出演で進めらていたものが、売れっ子になる事で断念せざるを得なかったのですね。
80年代後半はソフトなドラマが中心で1986(昭和61)年の「動物通り夢ランド」の門馬陵介役、翌1987(昭和62)年「ママはアイドル!」ではミポリンの旦那役などで人気を博し、1989(平成元)年の「ハロー!グッバイ」では久々に刑事役でしたが、エリート志向の警部役でアクションとは無縁でした。同年は映画「ゴジラVSビオランテ」で主演しています(この映画見に行きました)
その後90年代は時代劇で活躍し「将軍家光忍び旅」「将軍の隠密・影十八」「快刀・夢一座七変化」などで主演し新たなヒーロー像を体現していました。
つまるところ、仕事人の秀が最もヒーロー性あるかな、というところですが、彼のこの活躍にスカッとしたという方も少なからずいた事と思います。
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