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2022年4月の2件の記事

2022年4月24日 (日)

俺たちのヒーロー列伝・その23 天知茂(1931~1985 )

俺たちのヒーロー列伝・その22 露口茂(1932~ )

 

つづいてのヒーローは…

 

天知茂(あまち・しげる)さんです。

荒木しげるさん→露口茂さん、ときたので、「しげる」つながりにしました。

前回の露口茂さんとほぼ同年代で、共に渋い名優でしたが、「ニヒル」さの漂う主人公の似合う代表的俳優として「非情のライセンス」などの当たり役をもつ大スターでした。

ニヒルな存在感、というのはどちらかというと脇役に多く見られるものと思っていますが、これを主演者として表現し、存在感を高めっていた人、だと思います。

勿論「非情のライセンス」の会田刑事の印象が絶大なのですが、時代劇でも主演者として存在感を放っていた方でもあり、自分が見た限りで、あまり数はないのですが、それぞれの印象について綴っていきたいと思います。

 

「大岡越前」/神山左門

1970(昭和45)年より放送スタートしたロングラン時代劇で、初期はあの「水戸黄門」と交互に放送されていました。

その中で、初作から第三部までの出演でしたが、与力・神山左門として登場し、「カミソリ左門」とあだ名される切れ味鋭い与力役で、あまりちゃんと見た事がなかったのですが、後に演じる事となる「非情のライセンス」の会田刑事にそのままつながるような役柄でした。

 

「非情のライセンス」/会田刑事

1973(昭和48)年より3部にわたり放送された、彼の代表作です。

ニヒルな苦みばしった男の眉をひそめる姿が、世のマダムたちを虜にしたといっても過言ではない、ここで確固たる存在感を築き上げたといえるでしょう。

放送日は以下の通りです。

 第1シリーズ:1973年4月~1974(昭和49)年3月

 第2シリーズ:1974(昭和49)年10月~1977(昭和52)年3月

 第3シリーズ:1980(昭和55年)5月~12月

第1・2シリーズはほぼ同時期で、半年開いているだけで、第3シリーズは3年開いて1980年代の放送となり、少し異質な感じになっていました。

第1シリーズは1年で終了しましたが、第2シリーズは好評だったのか結局2年半続き100話を越えるエピソードがインターバルなく放送されました。そしてまたこの第2シリーズは多くの仲間の刑事たちが殉職し、某刑事ドラマを意識していた気がしましたが、実際にそのドラマで刑事が殉職するという同時期に、2話連続で殉職エピソードを出したりもしていました。(裏番組ではありませんが)

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ここで演じた会田刑事は、広島出身で両親を原爆で失くし自身も被爆者で、姉や妻など家族が悲しい最期を遂げ、人一倍犯罪を憎む熱い男で、とかくこのドラマは天知氏の持つ雰囲気がマダムキラー的に炸裂する人情刑事ドラマとイメージする方も少なからずと思いますが、実際見ると会田は結構拳銃の発砲をするし、しょっちゅう暴走して止まらないそれこそ「あぶない刑事」という感じです。

推理や説得など、腰を下ろしている時と、ハードなアクションをしている時の落差が結構大きいです。決して人情モノではなく、時にはバイオレンスアクションになるし、女性遍歴的なものも描かれる事も少なからずで、当時放送されていた坂上二郎さん主演「夜明けの刑事」などとは全然肌の色が違う刑事ドラマでした。

某人気刑事ドラマでいうところの、山さんとゴリさんを足して2で割って、別ドラマの櫻井刑事の血を入れて40代にしたかのような感じ?でしょうか。ただ存在しているだけのカッコよさ以外に、それとは裏腹に暴走気味な行動をするところも彼の魅力であり、こちらは男が見てもカッコいいと思える中年像だったように思いました。

サブタイトルには必ず「兇悪」の文字が使われていたのも印象的でした。

 

「野望」/氏家修(猪斐雅彦)

「非情のライセンス」の第2シリーズが終了後の1977(昭和52)年10月~1978(昭和53)年3月までの半年間放送された作品で、この原作をかねてよりいたく気に入っていて、主演したいと願い出たものの「非情のライセンス」が製作される事となり、5年越しで主演が叶ったといいます。

「非情のライセンス」の会田が、刑事ではなく、復讐魔になったような作品で、テイストは実に似ています。やはりハードボイルドであり、ただ違うのは変装したりとか、すこしコミカルな面も垣間見られますが、基本それらも復讐行動の為の小芝居のようなものでした。

会田のような刑事ではないので、拷問とかに制御がなく、それこそ相手を徹底的に痛めつけるシーンもありました。また相手役の三田佳子さんとの関係性もストーリーに絡んでいて、やはり刑事では描けない部分も描かれたりしていました。

 

「江戸の牙」/剣精四郎(つるぎ・せいしろう)

1979(昭和54)年10月~1980(昭和55)年3月まで放送された時代劇です。この出演の後、再び「非情のライセンス」に三たび登板する事となります。

江戸本所方を舞台に、密命を受けて秘密裏に立ち上げられた警察的な組織「江戸の牙」。悪人どもを一掃を目的とするこのチームのリーダーとして活躍する男の役柄です。

基本ハードボイルド調ではありますが、仲間に坂上二郎さんや藤村俊二さんなどコメディー系のメンバーがほぼそのままの役柄ででいる事もあり、マイルド瞬間とハードな瞬間の落差の激しい作品といえます。また新人時代の京本政樹さんがこの作品に見習い同心役でレギュラー出演しており、途中で殉職を遂げます。

クライマックスの殺陣シーン前の口上で「江戸の牙参上!」と告げて、斬り込みを始めるシーンがお決まりであり、印象的でもありました。

 

「闇を斬れ!」/鳥飼新次郎

1981(昭和56)年4月~9月に放送されたやはり時代劇作品で、ここでも主演しています。

「非情のライセンス」最終作に出演を終えたところで、ちょうどこの頃に50歳を迎えています。

タイトル通りですが、闇の組織の頭目であり、上司からその組織立ち上げの命が下ったストーリーは「江戸の牙」とおんなじです。

世は田沼時代で、歴史で習ったような悪として、これが敵キャラだった訳ですが、これらと対決するのが基軸でありますが、ストーリー的にはあまり利記憶がなく、ただCMに入る際のアイキャッチで大型犬がジャンプしていたのだけはよく覚えています。

そして、最終回は観れなかったのですが、主人公の彼を除く全員が殉職してしまう壮絶なラストだったようで、その仲間が坂口良子さん、三浦浩一さん、山城新伍さんでした。今では三浦さん除き全員故人ですが、山城さんがこういう時代劇の脇を固める時はいい役が多いんですよね。ラストで仲間を守って壮絶に死んでいくという点では「影同心Ⅱ」でもおんなじでした。

クライマックスの「闇を斬る!」の「きる」の天知さんの独特の言い方がツボでした。タイトルは「闇を斬れ!」で、口上は「闇を斬る」というもので、後に里見浩太朗さんが主演した全く違うドラマは「闇を斬るだったので個人的にその辺、こんがらがってます(笑)

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あと、連ドラではありませんが、2時間ドラマの「明智小五郎」シリーズでも人気を博して、彼の当たり役のひとつとなりました。初期「2時間ドラマの帝王」だったともいえます。

 

今の役者さんは、イメージがつきすぎてしまうのを恐れて「長く同じ役をやらない」という方が多いようですが、天知さんが会田刑事を長くやっていて確かにそのイメージはかなりつきすぎたと思うものの、その後にバラエティドラマにも出演されて新しい一面も見せたりしていました。だから長く出演しても悪い事はないと個人的には思っていますし、いろんな役がやれなくなることもないと思います。

 

惜しむらくは1985(昭和60)年、54歳の若さで亡くなられたという事で、もっと長生きされていれば、いろんな役柄が回って来てたでしょうし、実際50歳をすぎてから、それまでのような役柄とはちょっと違ったものも演じておられただけにその早世は実に残念でした。

2022年4月 9日 (土)

俺たちのヒーロー列伝・その22 露口茂(1932~ )

俺たちのヒーロー列伝・その21 荒木しげる(1949~2012)

 

続いてのヒーローは…

 

露口茂(つゆぐち・しげる)さんです。

われわれの子供時代の憧れのヒーロー、というよりは、当時40代のいわゆる「ナイス・ミドル」でした。

まだその渋いカッコ良さが理解できなかったままに、画面上の彼を見ていました。

年を取るにつれて、幼少時に見たこの渋い中年男性のカッコ良さが理解でき、また思い入れが増してくるというもので、当時見ていた若きハツラツラとした青年だけでなく、異彩を放っていた渋い大人のカッコよさに「ヒーロー」を見出しました。

昨日、4月8日は露口さん90歳のお誕生日でした。おめでとうございます。60代半ばごろから芸能の仕事はされていないようで、事実上の引退状態にありますが、これからもお元気に過ごして頂きたいと思います。

 

そんな訳で、自分の見た限りでの彼にヒーロー性を見出した役柄をピッアップしてみます!

勿論「太陽にほえろ!」の山さん役は彼の代名詞的な役どころですが、これについては最後に綴ります。

 

「清水次郎長」/黒駒勝蔵

1971(昭和46)年~1972(昭和47)年に放送され、竹脇無我さんが主演し次郎長に扮した作品です。

露口氏はここでは「黒駒勝蔵」という、次郎長にとっては「敵キャラ」でしたが、ふてぶてしさと狡猾さ冷静さをもち、あからさまに悪行を行う感じではありませんでした。知略をめぐらせ、あの手この手を考えるような、それでいて場合によっては、次郎長の味方をする事すらありました。あまり多く見れませんでしたが、「山さん」を演じる前の彼の役柄は、大体ひと癖もふた癖もある、どちらかというと敵キャラである事が多かった、のが印象です。

ちなみにこの「勝蔵」役は、翌1973(昭和48)年に「風の中のあいつ」というドラマで、「太陽にほえろ!」で共演した萩原健一氏が主役として演じており、助演で露口氏が敵キャラとして演じた役柄を、萩原氏はその若き日を主役として演じ、まったく敵キャラ然とした感がなく、描かれ方が全然違っていました。

 

「お祭り銀次捕物帳」/一本長兵衛

1972(昭和47)年に放送された、あおい輝彦さん主演の時代劇です。

ここでは、あおいさんが演じる主人公・銀次の良き相談役となる一本長兵衛という謎めいた男を演じていて、ここではどちらかというと悪の香りが漂う「善」の役柄という感じでした。ちなみに「太陽ー」で共演する萩原健一氏と少しだけ共演しています。

この時期に集中して、萩原氏と何かと縁が深かった露口氏でした。

このドラマの終了する前月には「太陽にほえろ!」がスタートしており、1ヶ月ほど「掛け持ち」状態でした。

 

「同心部屋御用帳・江戸の旋風Ⅱ」等/島津半蔵

1975(昭和50)年に放送された「同心部屋御用帳・江戸の旋風(かぜ)」という加山雄三さん主演の時代劇が好評により、続編が制作される事となり、1976(昭和51)年よりスタートしたこの第二シリーズから、露口氏が同心役としてレギュラーで加入する事となりました。

露口氏の連続ドラマでは「太陽にほえろ!」と掛け持ちしながら、このフジテレビでの時代劇シリーズも彼の代表作となり、一連の「江戸の」シリーズの常連俳優として小林桂樹氏と活躍を続ける事となります。

江戸の旋風では「Ⅱ」で加入し、断続時に放送が続きながら「Ⅲ」(1977年4月~78年4月)、「Ⅳ」(1978年11月~1979年5月)と3作にわたり継続出演しています。

この同心「島津半蔵」は限りなく「太陽にほえろ!」の山さんに近い役柄で、作品自体が現代版「太陽ー」のコンセプトでつくられていますが、そんな中で推理力、洞察力を駆使して謎を解き明かす渋いベテラン、独特の仕草・雰囲気を含め、まさに山さんそのものでした。

 

「江戸の渦潮(うず)」/辰蔵

1978(昭和53)年に放送された、「江戸の旋風」の派生的作品で、同番組の合間に放送されました。

ここでは「江戸の旋風」での同心から、岡っ引き役として登場していますが、渋すぎて岡っ引き然としてなかった感がありました。

主人公が親子同心で、小林桂樹(元同心)さんと古谷一行(現同心)さんが演じており、その配下にあたる役どころですが、全然そんな風に見えませんでした。

 

「江戸の激斗(げきとう)」/毛間内以蔵

1978(昭和54)年に放送された、「江戸の旋風」シリーズでの出演を終えてから、その後番組としてまたも「江戸の」シリーズに登場し、「江戸の旋風Ⅱ」から本作まで、3年9ヶ月もの間「江戸の」シリーズに出づっばりの状況でした。それも「太陽にほえろ!」と掛け持ちで。

この番組については、このブログでも記事にした事がありますが、役人にして金で雇った浪人たちと共に悪と戦う「遊撃隊」の隊長で、己の信念の為なら仲間を敵に回す事をすらも厭わぬ「鬼」と呼ばれた男で、でもやっぱり根っこの部分は「山さん」だなと思ってしまいます。

そして彼の演じるこの手のキャラは殆どが妻とは死別していて、そういう悲しい運命を背負ってきた男の厳しさと悲しさをうまく表現している事を感じます。

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「森村誠一の終着駅シリーズ」/牛尾刑事

1990(平成2)年~1994(平成6)年にわたり計4作、2時間ドラマで放送された作品で、彼の俳優人生最晩年の当たり役といえる役柄です。

俳優は同じ役を長くやると、そのイメージから抜けきれないので、早めに降板したい、というのが「太陽にほえろ!」出身俳優特にベテラン勢からは多くあり、そのために降板を申し出る俳優が重なって、プロデューサーが時期をずらすのに苦心したという話がありますが、確かにどこで彼を見ても「山さん」が個人的にはついて回りました。しかし、その山さんとの違いを見るのもまた良かったと思っていて、「当たり役」があればこそではないかなと思いました。

この作品はぼーっと見ててあんまり記憶はないんですが、山さんの延長上で見ていたんだと思いいます。

 

「太陽にほえろ!」/山村精一(山さん)

1972(昭和47)年~1986(昭和61)年まで、14年近く演じ続けた彼の「代表作」かつ「代名詞」ともいえる作品です。彼の俳優としてのキャラはこの作品で決定づけられました。それが良いのか悪いのかはありますが、自分は良いと思っています。

彼が「山さん」を降板した半年後に番組は終了しました。

犯罪者の人間心理を知り尽くした「落としの山さん」として、初期はまだ若かったせいか普段は麻雀に興じて、ここという時だけ出ていく感じたとか、喋り方が荒々しかったり、「動」の部分も少なからずありましたが、年を経るにつれて「静」の雰囲気がすっかり似合うようになり、背中で演技をするというか、その物腰だけで表現される、そんな感じを受けました。

特にこの写真の一本指を立てるポーズですべてを表現したり、その仕草が独特でした。

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豊富な経験から、推理は絶対的に外れず、ボスも部下たちも全幅の信頼を置く存在で、ボス役の石原裕次郎氏が大病後復帰してからは現場にはあまり出ず、署内で実質的に指揮を執っていた状況でした。

そんな山さんに「千代田署の署長」への栄転話が持ち上がり、危険な商売だからという事で、養子として引き取った子供と別れ、大きな事件を解決した直後…、組織の残党の報復の対象となり、物陰に隠れて2発の銃声が。

相手が事切れたのを確認階段駆けあがっていく山さん…。仕留めたか!と思い、電話でボスへ拳銃一丁押収の報告を入れた後…

袖口から血がしたたり落ち、意識が遠のいていき…、、そう、やはり相討ちだったのがここで確認できるわけです。

分かれる息子へ電話を入れた後は、受話器を置く事すらできず…23歩進んでいきますが、、倒れ、夜の闇に消えていくようにその命も消えていきました。という殉職劇でした。

「まさか、山さんまで死ぬとは…」と衝撃でした。

丹念に証拠を集め、推理力・洞察力に長けた男、これもまたヒーローだったんだなと年が上がるほどに、その良さが分かるようになってきました。

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